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Summer Festival(1)

2008.07.18 10:45|よみきりもの
Summer Festival(1)
by えむ&COW

2012年7月。

「はーい。」
玄関のチャイムに未沙がドアを開ける。
「どうも、こんばんわ。ヒカちゃんおるかな?」
「ええ。散らかってますけど、どうぞ。」
中に案内する。
「あっ、おじさん、お久しぶりです。」
「おお、ヒカちゃん、急にすまんな。・・お、そうや、まずは
結婚おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「まったく、ヒカちゃんもうまいことやりおって。こんなべっぴんさんの
嫁はんもろてから・・。」
「い、いやぁ、それほどでも・・・。で、今日はどうしたんです?」
「いや、実はちょっとお願いがあってな。」

ミンメイのおじさんの話はこうだった。
1月のカムジン・ラプラミズ事件のあと、マクロスシティの復興も進み、
街の人々(軍人、民間人、ゼントラ人含め)も落ちついてきたようなので
ここらでいっちょぱーっと楽しいイベントでもしようじゃないか、という
話が商店街のみんなから出た。子供たちも、今まで生きるか死ぬかの
せっぱつまった中で、やっとこさっとこ暮らしていたので、楽しいことも
プレゼントしてあげたい。メガロードの出航も控えているし、ちょうど夏
だし、今が時期的に一番いいんじゃないだろうか、と。
「ただ、商店街のみでやるとなるとイベントの規模も小さくなるので、
軍の協力をお願いして、マクロスシティ全体のサマーフェスティバル
にしたいんや。」
「ふーん、なるほど・・。」
「ヒカちゃん、それに未沙さんからも頼んでもらえんやろか。」
二人はしばし顔を見合わせたが、すぐに未沙が頷いて、こう答えた。
「おじさんのお話は分かりました。とりあえず、明日グローバル総司令に
聞いておきますね。・・でも、ご期待に添えないかもしれませんよ。」
「うんうん、とりあえず、話をつないでもらえるだけでもいいんや。
未沙さんもすんませんな、ありがとう。」
「いいえ、実現するといいですね。」
そうして、ミンメイの叔父は帰っていった。

翌日、サマーフェスティバルが軍とマクロスシティとの共催で
開催されることが決定した。開催は学校の夏休みに合わせ7月末となった。
バルキリーのアクロバットショーやカラオケ大会など多彩なイベント
が開かれる事になり、メインイベントとなるカラオケ大会には
参加人数を増やして盛り上げるため、司令センターからも参加者を出す事に
なった。
「カラオケかぁ。一時はまってたけど、最近は全然だわぁ。」
「キムはマイクもったら離さないもんね・・・。全然とか言って
実は結構行ってるんじゃないの?シャミーはどう?」
「ええっ?わたしはぁ・・・あんまり歌知らないしぃ・・・。そういう
ヴァネッサはどうなのよう?」
「パース。人前で歌うなんてはっずかしいじゃない!」
クローディアか未沙に振ろうと3人は二人の方をチラリと見るが
クローディアは腕で大きくバツをしているし、未沙も「私に出ろなんて
言うんじゃないでしょうねえ・・・」と言わんばかりにチラリと3人を
にらんでいる。
「あっ、そうだ、いいのがいた!」
そういって振り返ったシャミーの視線の先には、こっそり司令センター
から抜け出そうとしていた町崎がいた。
「なっなんですかっ?!まさか僕に出ろなんて言うんじゃ・・」
「まさかもなにもないの!よーし、決定!司令センター代表は町崎少尉でーす!!」
「えーっ?!ちょっとまっ・・」
「つべこべ言わない!男なら潔く引き受けなさーい!!」
こんなわけでブリッジからは町崎が参加することになったが、カラオケ大会
への参加申し込み者は当初の予想よりも遙かに多く、なかなかの混戦が予想
された。

そして7月も半ばになった。
マクロスシティにフェスティバルのポスターやディスプレイが飾られ
人々は久しぶりのお祭りを心待ちにしているようだ。
その頃総司令部では奇妙な噂が広まっていた。
「・・・ねぇねぇ、キムぅ・・・」
「なに?」
「夕べも出たらしいよ、例の幽霊。」
「ホント?あの、今展望デッキになってる元レーダールームだった
とこからなんか変な泣き声が聞こえるっていう・・・」
「そうそう、そうなのよ。なんでもね、ほら、きのうはメイとパナップと
ポッキーが遅番だったでしょ、仕事終わって、11時くらいかな、10時には
入り口がしまっちゃって誰も入れないはずの展望デッキから『・・う~・・
・・う~・・』ってほっそーい声が聞こえたんだって!こわーい!!」
「えー、犬か猫じゃないのぉ?」
「このマクロスの中に、そんなに簡単にノラ犬とか、ノラ猫とか入れるわけ
ないじゃん」
『ん?』
その時二人は人の気配を感じた。
『げっ、やばー、つい話に夢中になっちゃった・・・』
恐る恐る振り返ると、そこにはヴァネッサが立っていた。
「はい、今週の勤務ローテーション。なに二人で、話し込んでるの?」
「なんだぁ、ヴァネッサかぁ、びっくりさせないでよ。」
「ほらほら、あの例の幽霊の話よ、昨日パナップ達が見たんだって!」
「ヴァネッサは信じるこの話?」
「うーん・・・・。良くわかんないけど、でも面白そうね。」
その時、シャミーが青い顔ではっと息をのんだ。
「そういえばさぁ・・・。」
「何よ、変な顔して」
「レーダールームって、3年前の大戦の時に、めっちゃやられたんだよねぇ。」
「そうよ。だから今は展望デッキになってるんでしょ。」
「戦死者もたくさんでたよねぇ・・・。」
「・・・あっ。」
3人は顔を見合わせた。
「も、も、もしかして、地縛霊とかいうやつ?!」
「か、艦内だから、艦縛霊・・・?!」
「いやーん、なんでぇ?!」

3人は知らず声が大きくなっていることに気がついていないようだ。
上のデッキでは未沙とクローディアが3人の話を聞いていた。
「幽霊ですって?そりゃ確かにレーダールームでは戦死者が出てるけど。
そんなこといってたら、バルキリーの格納庫とか、地縛霊だらけじゃない。」
「そうよねぇ。」
「でも、面白そうね。せっかくだから、その幽霊の噂の真偽を確かめてみない?
ほら、昔から夏は肝試し、がお決まりでしょ。」
クローディアの瞳がいたずらっぽく輝く。
「えっ?!」
未沙は少々困惑気味だ。
「なに?怖いの?」
「そんなわけないでしょ。たかだか幽霊の噂に、真偽を確かめに行くっていうの
が本気かどうか、と思っただけよ。」
そう言ってぷいと横を向く。
「そうと決まれば、話は早いわね、じゃ、未沙、行くわよ。」

「・・・実は私、霊が見えるのよ。」
キムがもったいぶった様子で二人に話している。
「えっ?!」
「あれは小学生の頃だったわ・・・・」
キムが幼いころのお化け遭遇体験を二人に話す。
「知らなかったわ~。キムって霊感があったのね~。」
そこへクローディアと未沙が入ってくる。
『はっ』
凍りつく3人。
「もう、あなたたち、どうしてお喋りばっかりしてるの!」
未沙が睨み付ける。
「まあまあ、いいじゃない。キム、霊感があるってホント?」
「えっ、でも子供の時の話ですし・・・。」
「ちょうどいいわ、あなたたちの話を聞いてて思ったんだけど、
どうせだったら噂の真相を確かめに行かない?」
「えっ?」
「それって・・」
「そう、幽霊をこの目で確かめない?」
「ええ~っ?!」
「ちょっと、クローディア、本気なの?」
「ヴァネッサ、シャミーはどう?」
「ええええええええええええ・・・・」
シャミーはちょっと及び腰だ。
ヴァネッサは、別に、という表情で応える。
「じゃ、決定ね。昨日の今日じゃ、なんだから、明日にしましょうか。
ちょうど、明日から私たちが遅番でしょ?そういうことで、勤務終了後
上のチーフ席に集合ね。」
「り、了解・・。」

その日の夜。
「輝、ちょっとお願いがあるんだけど。。。」
「何?」
「明日の夜、つきあってほしいところがあるの。」
「へえ、めずらしいな。何、映画?コンサート?あれ、でも
明日未沙遅番って言ってなかったっけ?俺晩飯どうしようかと
思ってたとこだったんだけど。」
「輝も、幽霊の噂聞いてる?」
「ああ、元レーダールームから声が聞こえるってヤツだろ?
パトロール隊にも聞いたヤツいるって騒いでたよ。確かミリアも
聞いたとか言って騒いでるってマックスが頭抱えてたな。」
「その、幽霊の正体を確かめに行くことになっちゃって・・。」
「えっ?!なんでそんな話になったんだい?」
かくかくしかじか、と今日の話をする。
「なるほどねえ。じゃ、俺パス。明後日の朝訓練入ってるし。」
その答えを聞いて未沙が泣きそうな顔をする。
「な、なんだよ。」
「輝、お願い。この通り。」
「なんだよ、怖いの?」
うなずく未沙。
「じゃあ、どうして嫌だって言わなかったんだよ。」
「だって・・・」
『さては、またあの3人に私が幽霊ごとき怖いわけないでしょとか
なんとか言って後にひけなくなったってことか、まったく相変わらず
だなぁ・・』
「しょうがないなあ、分かったよ、付き合うよ。その代わり・・・」
「その代わり?」
「俺サマーフェスティバルの日、運良く非番なんだよ。できたら未沙も
休暇とってくれない?こんな大規模なお祭りなんて、俺たちもう、しばらく
行けないだろ?」
「分かったわ。クローディアに相談してみる。」
そう言うと輝にもたれかかる。
「よかった。ありがとう輝。これで一安心だわ。」
「いえいえ、どういたしまして。」

そして翌日の夜11時。
総司令部に集まった面々の表情は様々だった。
「あら、一条くんも参加?」
「ええ、上官の命令は絶対ですからね。」
ふーん、といった感じで未沙を見るクローディア。
未沙は恥ずかしそうな、怒ったような顔をしてそっぽを
向いている。
「ま、男の人がいたほうが安心よね。頼りにしてるわ。
それじゃ行きましょうか。」

6人の足音が廊下に響く。
レーダールームは最上部にある(昔のブリッジの近く)。
だいたい、夜中にこんなマクロスの最上部まで行く人間がいたということも
不思議なのだが(そうでなければ噂も広がるわけがない)人々の事情は様々、
ということなのだろう。
大体は若い軍人が、デートや、興味本位で(ひょっとしたらゲートが開いてて
展望デッキからの夜景が楽しめるかもしれない、という期待をもって。実際は
開いていることはなく、皆失望して帰ってくるのだが・・)
近くを通る際に遭遇したというケースが多いらしい。
時折、かすかな物音がおこると、その度にシャミーが小さな悲鳴を上げる。
未沙は輝にぴったりとくっついて歩いている。
本人は平静を装っているつもりなのだろうが、表情はこわばっている。
「ねぇ、キム、何か感じる?」
「ううん、ぜーんぜん。」
「あんたの霊感も大してたよりにならないわねえ」
「なによー、この辺にいないだけでしょ!」
その時、かすかに人の声のようなものが聞こえて来た。
「・・・えっ、何これ」
「まだ展望デッキまでだいぶあるよ?」
『・・・・あー・・・・あーー・・・』
不安定な、少しかすれたような声がする。
「変ね。この辺にそんな怪しいところがあったかしら。ねえ、未沙。」
「・・・・・」
未沙はクローディアの話をほとんど聞いていなかった。
輝にしがみついて顔を伏せている。
「んもう、怖いなら怖いって最初から言えばよかったのに。」
「それが出来てたら苦労してませんよ、この人は」
輝が笑う。
「それにしても変だな。この先って総合作戦室しかありませんよね。」
「ええ、でもあそこは使わない時は鍵を締めているし、幹部しか入れない
はずなんだけど・・」
「とりあえず、行ってみますか。」
「そうね。」
総合作戦室の近くまでくると、果たして、奇妙な声は確かにその部屋の
中から聞こえてきているようだ。
輝がそっとドアのノブに手をかける。
「鍵、開いてますよ。」
一同の顔に緊張が走る。
「入ってみますか。」
「・・わ、わたしここにいるわ。」
未沙が顔面蒼白で呟く。
未沙を除いた5人が扉を開けると!
「キャー!!!!」
「ギャー!!!!」
シャミーのばかでかい悲鳴に驚いたのか、中からも悲鳴が聞こえた。
「エキセドル参謀・・・」
「ああ、なんだこれはラサール大尉に一条大尉ではありませんか。」
「一体ここで何をなさっていたんですか?」
「いや、なに、今度のカラオケ大会に出ようと思いましてな。文化を広める
ためには指揮官クラスから率先して参加せねばと。それでグローバル総司令に
お願いして、ここで練習させていただいていたのですな。ここならめったに人も
きませんしな。特に今の時間は。」
「もしかして、ここ以外でも練習されていました?」
「は?いや、私はここでしかやっていませんよ。」
「違うのか・・・。」
「違うって、なんですかな?」
「いいえ、なんでもありませんわ、どうぞ練習続けて下さい、お邪魔しました」
6人は総合作戦室をあとにした。

「もしかしたら、展望デッキの一件も似たようなものかもね。」
未沙がつぶやいた。
「あらあら、途端に元気になったわね。」
「じゃ、展望デッキの方は、君が最初に中に入ってみるかい?」
「どうしてそんなこと言うのよ!」
「まあ、行ってみましょう。」
そして一行は最上階についた。
「みんな、ちょっと静かにして。」
クローディアが耳を澄ますと・・・確かに声のようなものが聞こえてくる。
それはか細く、時々とぎれながら、展望デッキの方から漂ってくる。
「噂は本当だったんだぁ・・・・・」
呟くシャミーの目には好奇心と恐怖が入り交じっている。
6人は展望デッキ入り口までやって来た。
「ここも鍵が開いてますよ。」
「おかしいわね、ここの鍵は司令センターからリモートコントロールでロック
するんだけど・・・。」
「私、確かに締めましたよ。」
ヴァネッサが証言する。
その間にも、声は途切れ途切れに続き、時々ため息ともなんとも言えない
息の継ぎ目が聞こえる。
そして、今度は・・・・
『・・・キューンキューン・・・キューンキューン・・・』
「これ、『私の彼はパイロット』じゃない?すっごいヘタクソだけど」
「やっぱりだれかがカラオケの練習してるのかな?」
「でも、どうやってはいるのよ、私達が遅番で締めて帰ったんだから、
誰も入れないはずよ」
「まあいいわ、入ってみましょう。」
クローディアの声に促され、6人は展望デッキの中に入る。
ところが、人影は見当たらない。
「おかしいわね。どういうことかしら。」
クローディアが訝しげに展望デッキ内を見渡す。
未沙は再び輝にしがみついて動かない。
シャミーは一触即発叫び出しモードだ。
人の気配を感じたのか、か細い歌声が途切れた。
沈黙が流れる。
「いやーーーーーーーーー!!こわーーーーーい!!!!!」
突然シャミーが悲鳴を上げた。
それにつられて未沙も輝にしがみつく。
「やっぱりこなければよかったわ、こんな思いをするくらいなら
素直に怖いから嫌だって言えばよかった・・・」
「大丈夫だよ、未沙、取って食われるわけじゃなし・・・」
輝は苦笑している。
その時、遠くの方で人影が動いたように輝には見えた。
「誰だ?!」
輝の声にびくっと反応した人影がこちらに恐る恐る近づいてくる。
「・・・す、すみません、ぼくです・・・。」
「町崎くん!」
「あんたこんなとこでなにやってんのよー!!」
「だって、だって、みんなが僕にカラオケ大会に出ろなんて言うから・・・」
町崎は3人娘の攻撃を受けて一層小さくなる。
「人前で歌なんて歌ったことないし、だいたい、声も小さいし・・・。」
「それで練習してたってわけか。」
「それにしてもどうやってここ開けたのよ。あんた、今日早番だったじゃない。」
「いつも、遅番の人が帰ったのをみはからって、コッソリ司令センターからロッ
クを開けてたんです・・・。」
「なーんだあ。びっくりさせないでよ。」
「まあ、よかったじゃない、幽霊の正体が町崎くんだって分かって。」
クローディアが安堵のため息をついた。
「よくないわ!こんな人騒がせなことして、勝手に展望デッキの鍵を
開けるなんて、オペレータ失格よ!」
未沙のキビシイ視線と言葉にますます縮み上がる町崎。
「えらそうなこといって。自分が怖い思いしたからって町崎にあたらなくても
いいだろ。」
輝がちゃかす。
「町崎のおかげで今度の休暇一緒にとれることになったんだから、俺は感謝
してるけどな。」
小声で未沙に言う。
「んもう。」
未沙も小声で答える。
「あーあ、新婚さんはどこに行ってもラブラブなんだから。いーなあ、私も
早く結婚したい~。」
シャミーがそんな二人をしっかり見ていた。
「あんたはそんなアテないでしょ。」
お決まりのツッコミをヴァネッサが入れる。
「そうよ、まずは彼氏でも探さないとね。」
大げさに肩を竦めて展望窓の方へ目を向けたキムの動きが止まる。
『あれ、今の・・・・』
ふわりと羽衣のようなものが漂って行くのが見えたような気がした。
もう一度良く目を凝らして見るが今度は何も見えない。
「どうしたの、キム?」
ヴァネッサに声をかけられてはっと我に帰る。
「えっ?・・何でもないわ。」
声の正体は町崎と分かったんだし、何も今更幽霊だなんて・・・。
『気のせいよね』
キムはそう考えた。

そして、マクロスシティのお祭りの日はやってきた。
朝から花火が打ち上げられ、マクロス艦内も特別に解放され、
シティ全体がお祭りムード一色に染まり、とてもにぎやかだ。
天気にも恵まれ、青空が広がっている。

「輝と一緒のお休みなんて、ほんと久しぶり。」
朝食の支度をしながら未沙は嬉しそうにつぶやいた。
輝と結婚して2カ月になろうとしていた。
自分も輝も忙しい日々が続いてはいたが、幸せであった。
「輝、起きて。朝食よ。」
「もうそんな時間か・・。」
パジャマ姿のまま輝は食卓につき、新聞に目を通す。
フェスティバルのイベント予定が大きく載っている。
「ああ、そうだ、今日は午後からアクロバットがあるんだな。
これは外せないな。」
「夜の花火も見たいわ。あと、町崎くんや、エキセドルさんが
出場するカラオケ大会もね。」
「カラオケ大会は夜だな。じゃ、アクロバットが始まる時間に合わせて
出掛けて、外で食事して、カラオケや花火を楽しむとしますか。」
「ええ。久しぶりだわ、お祭りなんて。なんだかワクワクする。」
未沙は本当に嬉しそうだった。

そして昼過ぎになった。
「そろそろ出掛けようか。」
「ええ。」
二人が出掛けようとしたその時、電話が鳴った。
「なんだよ、こんな時に・・・。」
ブツブツ言いながら輝が受話器をとった。
「はい、一条です。え?なんだって?・・ちょっと急にそんなこと言われても困
るんだけど・・・。」
「どうしたの?」
「いや、これからあるアクロバットのことなんだけど・・・。ソロで飛ぶヤツが
昨日バイクで事故ったらしくて、とても今日バルキリーに乗れる状態じゃないらしい
んだ。」
受話器を抑えて輝が答える。
「そんな、急に、大丈夫なの?」
「まあ、ソロで飛ぶアクロバットなら、今までにもやったことはたくさんあるか
ら出来ないことはないけど、いきなりはムリだから、いますぐ行って準備して
終わった後もすぐには戻れないから・・」
すまなそうな視線を未沙に向ける。どうしようかと悩んでいるらしい。
「私のことだったらいいわよ、司令センターに行けばクローディアもいるし。
夜までには戻れるんでしょ?」
「多分ね。」
「じゃあ、引き受けてあげなさいよ。私、輝のアクロバット見たことないから
楽しみだわ。」
「そう、それじゃ・・・」
結局輝はアクロバットショーに出演することになってしまった。
二人はとりあえず夕方家で待ち合わせて再び一緒に出掛けることにして、
未沙は司令センターに、輝はプロメテウスに向かった。

そして夕方。アクロバットショーも無事終わり、待ち合わせ時間が近づき、
未沙は家に戻ってきた。
「すごいわ、輝。感心しちゃう。」
未だ興奮覚めやらぬという感じである。
自分の知らない輝を見たようで、ドキドキしていた。
夜の部まではまだ時間があった。輝もまだ帰ってきていない。
「あっそうだ。せっかくだから、着ようかな。」
シャワーを浴びた未沙は浴衣をとりだした。
「やっぱり花火には浴衣よねぇ。」
ふふっと笑う未沙の顔には少女の頃の明るさが戻ってきていた。

1時間程たったがまだ輝は帰って来ない。
「おかしいわね。もう帰ってきてもいいはずなのに・・。早くしないと
カラオケ大会も始まっちゃうわ。」
電話のベルがなる。
「もしもし」
「未沙?ごめん!」
「ちょっと、輝、今どこにいるの?!」
「終わった後、捕まっちゃったんだよ。ちょっと抜けられそうにないんだ。」
「それって、飲んでるってこと?」
「まあ、そうとも言うね・・・。それで申し訳ないんだけど、未沙、先に
行っててくれない?なるべく早く抜けて行くからさ。頼むよ。」
「んもう!分かったわ、早く来てよ!」
『どうして輝ってこういつもルーズなのかしら。大体、今日休暇とってくれ、
一緒にフェスティバルに行こうって言ったの、誰よ!』
未沙はプリプリしながら家を出た。

イベント会場は大勢の人でごった返していた。
『さーぁ、みなさん、お待たせいたしましたぁ!
本日のメインイベント、マクロスシティカラオケ大会、ただいまより開幕です!』
司会の言葉に合わせて、始まりの合図の花火が夜空に上がる。
舞台には次々と出場者が登場し、自慢ののどを披露していく。
家族総出で出場というチーム(?)もいた。
ワレラ、ロリー、コンダの3人はミンメイメドレーを振り付で
歌っている。
「結構うまいのね、みんな。それに楽しそうだわ。知ってる人の意外な
一面を見られるっていうのも面白いわね。・・・メガロードでもこういう
イベントを開催して、みんなと楽しい時間を一緒にもちたいものだわ。
・・・文化を広めるのもメガロードの役割、だものね。」
未沙は、輝との待ち合わせ場所からステージを眺めている。
一人でイベントに行くのは寂しい気もしていたが、来てみると
やっぱり家で一人でいるよりは、はるかに楽しい。
久しぶりにワクワクした気持ちになる。嫌な気持ちが夜風に流されて
いくようだった。

「あっ、早瀬少佐だ、早瀬少佐ぁ!」
聞き覚えのある声に振り返ると、シャミー、キム、ヴァネッサがいた。
「あっ、これ、浴衣ですよね。初めて実物をみたわ。」
「よく知ってるわね。」
「素敵ですよ。やっぱりいいですね、なんだか昔本で読んだ
『日本の夏』そのものって感じですね。」
「ありがとう。私も久しぶりに着たのよ。それよりどうしたの、なんだか
3人ともすごくあわててるように見えるけど?」
「どうもこうもないですよ、町崎が逃げたんです!」
「ええっ?!だって、彼あんなに練習してたじゃない。」
「それが、今日、一応頑張ってねとでも言ってやろうとおもって
電話したら、いないんです。」
「どこか出掛けてるだけじゃなくて?」
「それが、さっき大会事務局に行ってみたら、やっぱり、いないそうなんです。」
「なんですって!」
「それで、このままじゃ司令センターの名誉が危ない(?)ってんで、3人で町
崎を探してるんですよ」
「そうなの。でも、逃げた人が、のこのこ会場にやってくるかしら」
「やっぱりそうですよねぇ・・・。」
しばし黙り込む3人。
「あっ、そうだ!」
シャミーは呟くと、キム、ヴァネッサに素早く目配せをした。
「早瀬少佐、ちょっと来て下さい。」
「ちょ、ちょ、ちょっと何するの?!」
3人は無理やり未沙の手をひっぱった。
「せっかく浴衣着てるんだし、少佐が代わりに出て下さい!」
「なんですって?!」
そして、そのまま強引に未沙は連れて行かれたのだった。
(いくらなんでも3対1じゃねぇ・・・)

「うっわー、やっべぇ、もうこんな時間だよ。未沙怒ってるだろうなぁ・・」
輝は大慌てで待ち合わせ場所に向かった。時計はすでに7時半を回っていた。
カラオケ大会も中盤に入っている。
今日のバルキリー隊のアクロバット指導をしてくれた人の中に、輝の父を知って
いる人がおり、昔話に花が咲き、すっかり飲まされてしまったのだった。
待ち合わせ場所に行くと、果たして、未沙はいなかった。
「あちゃー、やっぱり。。。怒って帰っちゃったかな・・・」
未沙の冷たい視線を想像して、頭を抱える輝。
その時だった。
『次の出場者は・・・浴衣姿も美しい新妻、一条未沙さんです!さあ
歌って頂きましょう!曲は『遙かなる想い』です。』
「へ?!」
アナウンスにびっくりして振り返ると、舞台には緊張した面持ちで
マイクを握りしめる、浴衣姿の未沙がいた。
「確かに、未沙だ・・。」
とりあえず、輝は人込みをかき分けて舞台袖に向かった。

同じころ、昔のブリッジのモニターで、クローディアがこの模様の
中継を見ていた。
「あら、未沙じゃない。町崎くんの代わりは未沙になったのか。」
「おや、これは早瀬君じゃないか。」
「総司令。どうしたんですか?」
「人込みの中に行くのも疲れるし、かといって一人でいるのも
つまらんのでな。ここにくれば君がいるだろうと思って。」
そう言うと、咳払いを一つした。
「そうですか。ほら、未沙が歌ってますよ。初めて聞きますわ。」
「私もだ。・・・上手じゃないか。」
「ええ。メガロードの艦長は素晴らしいですわね、文化を守る事も、生み出す事
も出来るんですから。」
クローディアはいたずらっぽく笑った。
「そう言えば、総司令は歌わないんですか?」
「私か?いや、そういうのは苦手でな。エキセドル参謀のようにはいかんよう
だ。そういうクローディア君はどうなんだ?」
「私も、鼻唄程度ですわ。残念ながら文化を生み出す事はできません。」
そういってフロントガラスの方へ立っていく。
しばらくして、未沙の出番は終わり、拍手がモニターから聞こえていた。
拍手の中からグローバルの耳に呟くような歌声が届いた。
♪- Love me tender, Love me sweet, forever・・・ -♪
それはクローディアの歌声だった。
どんな想いでクローディアはこの歌を歌っているのだろう。
歌声はグローバルの心に、静かに広がった。

「あの・・お取り込み中すいません・・・」
弱々しい声に二人が振り返ると、そこにいたのは町崎であった。
「町崎くん!ちょっと、あなた今までどこで何してたの?!」
「ひぃぃぃぃー、すいません~、決して悪気があったわけでは
ないんですー。」
クローディアの剣幕に押されて泣きだしそうな町崎の様子に
グローバルが口を挟む。
「一体どうしたと言うのだね?まあ、そこに座りたまえ。」
「す、すみません、総司令・・・」
「済んでしまったことは仕方がない。私達がいると知っててここに
ワザワザ来るところを見ると、何か報告することでもあるのかね?」
「あっ、そうだ、そうなんです。旧レーダールームの幽霊の噂なんですが・・・」
「それなら、正体は分かってるじゃない。あなたの歌でしょ?」
クローディアが少しイライラした様子で話を遮る。
「違うんです、本当に出たんです、幽霊が!!」
「なんですって?!」
「僕、昨夜もあのレーダー室で練習していたんです。ちょっと疲れたんで、
展望デッキのベンチに腰掛けてボーッとしていたら、急にあちこちからカタカタ
音がして、僕が座ってたベンチが急に僕を投げ出したんです。」
「ベンチが町崎君を投げ出した、ですって?」
「そうなんです。びっくりして見上げたら、ぼや~っとした白い影が笑いながら
僕を見てるんです。それから先はもう、無我夢中で、とにかく白い影から逃げようと
植え込みのところにやっとの思いで隠れて、一晩中じっとしていたんですよ。」
「それで?どうしてカラオケ大会に出なかったの?」
「実は、そのまま眠っちゃったみたいなんです・・・・。気がついたら、
もうカラオケ大会が始まってて・・・」
すまなさそうな顔で二人を代わる代わる見る。
グローバルとクローディアは顔を見合わせて、ただ笑うしかなかった。

さて、未沙は、やっとの思いで歌い終わり、舞台から下りた時には
恥ずかしさで顔が真っ赤になっていた。
「未沙!」
人込みの中から輝が手を振っているのが見える。
「輝!」
未沙は怒っていたことなど忘れて、輝の胸に飛び込んだ。
「どうしたんだい、カラオケ大会に出るなんて、ひと言もきいてないよ?」
「それが・・・。」
未沙はことの顛末を説明した。
「そういうことか・・・。今日は俺も、未沙も、突然で困ることばっかりだなあ。」
「もう、シャミー達に無理やりひっぱって行かれて、でも他に誰もいないから
仕方なくて・・。練習も何もしてないし・・。唯一歌える歌だったのよ。
恥ずかしくて顔から火が出そう!」
「でも、上手だったじゃない。正直言ってびっくりした。未沙も歌、歌えるんだな。
それに・・・。」
「なに?」
「浴衣もとっても似合ってるよ。これも、正直言ってびっくりした。」
「そう?」
嬉しそうに微笑む未沙。ますます顔が紅潮する。
『さて、お集まりのみなさま、そしてテレビの前のみなさま、以上で
全ての出場者の歌が終わりました。ここで審査発表までの間、みなさまに
花火をお楽しみ頂きましょう!』
アナウンスが終わるやいなや、舞台の照明が消え、ドーン!という大きな音と
ともに夜空に大輪の花が咲いた。
「わぁぁ・・・・・。」
「子供の頃に一度か二度は見た事があると思うんだけど・・。きれいだな。」
そう言って輝が未沙を見ると、未沙は子供のように目を輝かせていた。
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