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Little Happiness Epi.2

2008.09.02 10:58|Little Happiness
Little Happiness Epi.2

ほどなくして2人は目的地に着いた。
「・・メディカルセンター・・」
「ええ、行きましょう。」
受け付けを済ませ、待合を通りぬけ、受診科の前に来たときに
輝は初めて気がついた。
「未沙、ここ・・・」
未沙が照れくさそうに、振り返る。
「私、妊娠したみたいなの。
ここに来るまで言えなくて、ごめんなさい。」
「いや、そんな、でも、どうして?」
「どうしてって、あなたに、一番に教えたかったからよ。」
「・・・そう」
輝は未沙が愛しくて力いっぱい抱きしめたかったが、
さすがにここではできなかった。

静かになったリビングで輝は一人ビールを飲んでいた。
夕食もほとんど食べられず、だるそうに横になる未沙を無理やり
先に寝かせた。
会えなかった何日かの間にこんなに体調が悪くなっているとは
思わなかった。
けれど、原因が判ったので、必要以上の心配はしなくてよくなったが。
『うれしいことは、うれしい・・・ような気がするんだけど』
手元にある一枚の画像。黒い背景のなかに小さな白いもの。
未沙にこれよ、と説明されてもまだわからない。
現在9週目に入っており、未沙は医師に説明されて、画面の中で
小さな命が鼓動を刻むのを確認したということだが、輝はそれも見ていない。
嬉しそうに話してくれた彼女と対照的な自分の反応に戸惑う。
『なんて言うか、実感沸かないよな・・・。俺にはなんの変化もないし』
ぐびり、とビールを喉に流し込む。
今は、とにかく未沙の体調がすぐれないことが心配で、
それ以外のことは考えられないような気がした。それに・・・
『本人が一番心配しているとは思うけど、どうするんだろう、メガロード』
自分にも責任があるくせに、人事のようについ考えてしまう。
『産まない・・・のかな。』
職務への義務感が強い彼女ならこの選択もあり得ると思う。しかし、それは寂しい気もした。
そんな気持を持ってしまう自分が身勝手に思えてしまう。確かに彼の子供でもあるが、
産むのは彼女だ。
近いうちにゆっくり話さなくちゃな、と思いつつ、次に2人の時間が取れるのはいつだろう?
こんな生活で未沙も、おなかの子供も大丈夫なのか?
明日・・・自分が早番で、未沙は昼からの出勤だ。また顔を合わせられないかもしれない・・
『いやだな、こんな生活・・・』
仕方ないけど、とつぶやきながら、輝はまたメモを書き始めた。

『ミサへ おはよう。気分はどう?
俺は早番だから朝は会えないかもしれない、だから伝えたいことを
書いておくよ。返事はメールでもいいし、時間が取れたら、会って話をしよう』

そこまで書いたとき、寝室から、未沙が起きてきた。
「輝、まだ起きてたの?明日早番なんじゃないの?」
「未沙こそ、寝てなきゃ・・」
「気分が悪くて、眠れないの・・横になっていても吐き気がしてね・・」
「そう、・・こっちにきなよ」
隣に座った未沙を優しく抱きしめる。
その途端、未沙が顔を歪めた。
「輝・・お酒くさい・・・」
「えっ、そんなに飲んでないんだけど、気になる?」
「なんだか急に、敏感になったみたいで・・ごめんなさい」
未沙は申し訳なさそうに輝の腕から離れ、ソファにもたれた。
「ふう・・、やっかいね。・・あら?」
未沙が手元のメモに気がついたようだ。
そう、大事なことを忘れてた。話せるならきちんと会って
話したほうがいい。
でも。
こんな現実的な話を今持ち出していいものか・・輝は躊躇った。
しかし、自分たち家族にとって大事な問題だ。
意を決して口を開いた。
「あの、未沙。君もきっと考えているとは思うんだけど」
「なに?」
「どうするの、メガロード」
その言葉を聞いて一瞬未沙の体がぴくっとしたような気がした。
起きてきてからの数分でも、未沙は何回も苦しそうなため息を漏らしている。
「そんな体で、今までみたいな勤務は無理だろ?それに産んでからだって
すぐには復帰できないだろうし・・。
なにより、そんな無理はして欲しくないし・・。」
「そうね、その通りね。・・輝に言われなくても判ってるわ。」
輝は不安に思っていることを、思い切って聞いてみた。
「・・・産まないことも、・・考えてる?」
「それは、ないわ。」
輝の目をまっすぐに見詰めて未沙は言い切った。
そして、少し伏目がちに続けた。
「正直に言うとね・・、かなり悩んだわ。最初に気がついたときは、
どうしよう、こんな時にとんでもないことになってしまったって。
こんな状況じゃ産めない、任務が続けられない、沢山の人に迷惑を
かけてしまうって。──でもね、気がついたのよ、当たり前のことに。」
顔をあげ、もう一度輝の目をじっと見詰める。
「艦長の代わりはいても、この子を産んであげられるのは
私しかいないってこと。生きたくても死んでしまった人が沢山いるのに、
せっかく授かった命を産まないなんて、
それは身勝手な考えだと気がついたのよ。」
「そんな・・、身勝手なのは俺の方だろ。」
「え?」
「君の立場も考えずに、その、・・子供を作ってしまって・・・。」
「・・子供、欲しくなかった?」
「いや、違うんだよ、そうじゃなくて。俺は、よくわからないけど、
大変なんだろ、子供産むのって。・・・俺の母さんもそれで死んじまった
くらいなんだから。今、君はとても忙しくて、責任ある仕事をしてて、
それなのに、まだ大変な思いをさせてしまうのかと思うと、なんて言うか・・・」
『つくづく、不器用な人ね・・・。』
一生懸命自分の思いを伝えようとする彼を見ながら彼女は思った。
『正直で、優しい人』
「輝。もし、本当に私が望まなかったなら、ちゃんと対策を講じてるわ。
でもそうしなかったんだから。いいのよ。あなたは身勝手じゃないわ。」
その言葉を聞いて僅かに輝の瞳に安堵の色が浮かぶ。
「・・そう。そう言ってくれるのは、ありがたいけど。・・それで、
メガロードは・・・どうするつもりなの?」
未沙は少し寂しそうに、しかしすっきりとした表情で輝に告げた。
「・・降りようかと思って。艦長を。」
「やっぱり・・。」
「あなたはどうするの?」
「地球に残るって言っても、仕事はあるとおもうよ。」
「私も、それはあると思うの。ただ、問題は」
「後任の人選」
「そう。あなたの後任選びも一悶着ありそうじゃない?」
「そうだな。ところで、その、君が妊娠したって話は誰か
司令センターで知ってるの?」
「いいえ。まだよ。あなたが一番だって言ったじゃない」
くすっと笑う。
「でも・・気がついてる人はいるかも。」
「君の親友さん?」
「多分ね。」
「明日・・司令センターの皆に話すつもり?」
「ええ。その前に総司令にお会いして私たちがメガロードから
降りることをお話します。」
「・・俺も一緒にいくよ。その、共同責任があると思うから。」
責任ってあなた・・未沙は苦笑した。

ふと、未沙は大事なことを思い出した。
時計をみると12時を回っていない。まだ今は11月4日だ。
「そういえば・・輝、自分のことで手一杯で忘れてたけど・・」
「なに?」
輝は未沙に言われて、はっと気がついた。そうだ。
「20歳のお誕生日、おめでとう。」
「ははっ。ありがとう。俺も忘れてたよ。」
「ごめんなさいね、何のお祝いもしてあげられなくて」
「何言ってんの。お祝い、もらったじゃない。」
「え?」
「俺は正直、実感沸かないから、恥ずかしいんだけどさ・・」
照れくさそうに、そっと未沙のおなかに手を当てる。
「赤ちゃん。・・なんか嬉しくなってきた・・ような気がする。」
「そういっていただけて、私も嬉しいです。」
未沙はおどけて返事をした。
輝はそんな彼女をたまらず抱きしめた。
「輝・・お酒くさいってば・・」
「ごめん。吐いてもいいから。」
「そういう問題じゃないわよ~」
むくれる未沙をなだめるようにもう一度優しく抱きしめる。
「未沙。・・・大好き」
「・・私も」
「・・・コミリアちゃんより可愛い子が生まれてくるかな?」
「当たり前でしょ、私の子だもの。」
「よく言うよ」

2人は体調の悪さも、メガロードのことも忘れて、一緒に笑った。

**

翌日2人にこの事実を告げられたグローバル、そして同席していた
クローディアの反応は、彼らの予測していたものと
大きく異なっていた。

「なぜ、メガロードを降りなくてはならないのかね?」
「ですから、先程お話した通りです。」
「その事情はよくわかった。しかし、降りる必要はないと思うのだが。」
「仮に、艦長を続けたとしても現実問題として、長期間職務を離れなくてはなりません。
そのような無責任な状態では他クルーの信頼も得られず、ひいてはメガロード計画の
円滑な遂行そのものにも悪影響を与えかねません。」
「早瀬君、メガロード計画の目的は何か、忘れていないかね?」
「宇宙移民、人類播種および文化の伝播です。」
「君の今の状況はその目的に適っていないかね。」
「・・・」
2人のやり取りを聞いていたクローディアが静かに口を開く。
「実は艦長殿にお知らせがあるの。」

「メガロードの進宙は2年延期する。本日の会議で了解を得られれば決定の予定だ。」
グローバルが落ち着いた口調で告げた。

「・・・なぜですか?!」
「メガロードの旅は長旅になる。準備期間は長い方がいい。これだけの期間があれば、
現在開発中のバルキリー新型機をメガロード航空隊に配備できる。」
「それは、すごい!操縦訓練も十分間に合うと思います。」
輝の目が輝く。しかし未沙には納得がいかない。
「乗船予定の民間人・クルーにはどう説明するんです?既に選抜済みですよ。」
「2年の期間があれば、移民の為の準備、教育も重ねてじっくりとできるだろう。
多少の人数の変動はいたし方あるまい。またスケジュールの変更もありうる、
と募集の際に告知してあるはずだ。」
「その2年の間に何かあったらどうするんです?監察軍が襲撃してきたら?」
「それは地球上でも、宇宙でも同じだろう。そのときはそのときだ。
準備不足で宇宙へ出て、襲撃を受け壊滅するよりも、十分な装備と訓練を経て
万全な体制で航海に出るべきではないのかね?」
君も艦長だったらそのくらい判るだろう、という言外の意図を感じて未沙は
うっと言葉を詰まらせる。
「メガロードはやむにやまれず宇宙へ飛び立ち漂流したマクロスと違い、
最初から宇宙移民が目的で航海する艦だ。植民可能な星が見つかるまでは艦内で
軍人・民間人すべての衣食住、そして職まで賄わねばならん。現状ではまだまだ
システムの不備が否めない。見切り発進はできんのだよ。2年でも果たして完備
することができるのか。それは早瀬君、君も承知のはずだ。」
しかし未沙はまだ納得がいかない。
理由はいくらでも作れば出てくるだろう。それは知っている。
それゆえ、彼女は激務が続いていたのだから。
けれど、なぜここへ来て出航延期なのか?
彼女にはやはり、自分達の事情が原因としか考えられない。
私事でこんな重大な決定を引き起こしたのではという思いが彼女を苦しめる。
そんな未沙の気持を見透かしたかのように、クローディアが言葉を継ぐ。
「未沙。このことはあなた達から話を聞く前に総司令が考えていらしたことよ。
いくら私達があなたと親しいからと言って、さすがにあなた達夫婦の事情で出航を
延期するなんてことはあり得ないわ。それはあなたも判るわよね。
今回の話は、偶々タイミングが重なっただけ。ラッキーなときに授かったというだけよ。
感謝するなら赤ちゃんにするのね。」
「でも・・」
「この件については、ここではこれでお終いよ。この後の会議、
あなた達も出席するわよね。正式に決定したら、その後のことを
決めなくちゃいけないから、きついとは思うけどそこまでは頑張ってもらうわよ。」
「その後のことって?」
「これも今日の会議のあと、あなたに紹介するつもりだったんだけど。
あなたに副官をつけようと思っているの。」
「副官を?」
「ええ。いくらなんでも軍内部のことから外部との付き合いまであなたひとりで
こなすには無理があるでしょうから。ちょうどよかったわね。
職務を離れている間のことも含めてよく相談するといいわ。」
「それで、副官は誰なの?」
「今は作戦司令部付のブラウン少佐よ。知ってるわね。」
「・・ええ。直接は知らないけれど、優秀な方だと伺っているわ。」
「彼には、少し状況が変わったことは私から伝えておくから。これで心配事はなくなったはずね。」
黙って聞いていた輝が口を開く。
「総司令、そしてクローディアさん。本当にありがとうございました。」
「いいのよ。何もしてないわ。それより、最後になってしまったけど・・」
「うむ。早瀬君、一条君、おめでとう。」
「おめでとう。未沙、よかったわね。産まれたら一番に抱っこさせてよ」
「ありがとうございます、総司令。・・ありがとう、クローディア。」

私はなんて恵まれているんだろう。未沙は心から感謝した。


続く
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