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Little Happiness Epi.4

2008.09.02 10:55|Little Happiness
Little Happiness Epi.4


季節は既に初夏へと移っていた。明るい陽射しに新緑がまぶしい。
重要事項への意思決定や、細々とした指示を除いて、彼女は約1ヶ月前から産休に入っていた。
こんなに何もなく、のんびりと日々を過ごしたのはいつ以来だろう・・
輝を見送り、日中は本を読んだり、音楽を聴いたり、料理をゆっくり作る。
胎動が激しくなってきたおなかの子と会話し、歌を歌う。
おなかが大きくなってきたせいもあり、身体は重く、立ちつづけているとおなかが張るので
あまり無理はできないものの、輝が休みで天気のいいときには、一緒に近くを
のんびり散歩したりもした。

その日も天気がよく、2人は家の近くの公園を散歩していた。
数ヶ月前の、激務ですれ違いだった日々とは正反対のような毎日に2人の表情も心なしか明るい。

「ああ、いいよな」
「なにが?」
「なんてことない、この毎日が。」
「そう?・・私は少し、物足りないような気がするけど・・」
いたずらっぽく笑う。
輝も冗談混じりに答える。
「ま、そりゃそうだよな。なんてったってつい最近まですごい激務をこなしてた方ですから。
・・でもさ、俺はちょっと嬉しかったりするんだよな。」
照れくさそうに微笑みながら言葉を継ぐ。
「俺にとっては、こんなのって、初めてだからさ」
「え?」
「家を出るとき見送ってくれる人がいて、帰ってきたら誰かが出迎えてくれる生活」
幼少の頃の未沙には当たり前だった生活だ。
そうだった・・未沙はちょっと悲しい気持ちになった。
「ごめんなさい、物足りないなんて言って。」
「何で謝るの?そんなつもりで言ったんじゃないって。どうせ復帰したらこんなこと
してもらえなくなるんだから、今のうちに堪能しておくよ、ってだけの話。」
「それならいいんだけど・・。」
「──そろそろ戻ろうか。おなか張ってない?大丈夫?」
すっと手を差し出す。
その手をそっと握り返す。
木漏れ日が暖かく2人に降り注いだ。

家に戻ってしばらくして、輝がソファでうとうとしていた時だった。
「輝・・・・あのね、もうすぐ、陣痛が始まるかも」
「えっ?!」
俗に言う「おしるし」、出産の前兆となる出血があったと、彼女は輝に告げた。
予定日まであとまだ1週間ある。
しかし、いつ生まれてもおかしくない時期に来ていることは、未沙から教えられて
輝も知っている。
「まだまだ生まれるのは先、だけどね。」
口調は冷静だが、心なしか緊張しているようにも見える。
輝に言いながら、自分自身に言い聞かせるように。
そして、大きく息を吐く。
輝にもたれかかって小さく呟く。
「ちゃんと、産めるかしら・・少し怖い・・。」
そんな未沙を優しく抱きしめる。
「大丈夫。大丈夫だよ。ちゃんと、準備もしてきたんだし・・」
本当は輝も心配なのだがそう答える。
「・・ねぇ、未沙」
「なに?」
「俺、立ち会ってもいい?」
正直、未沙は戸惑った。どうなるかは分らないが、取り乱した姿を
彼に見られたくない気持ちがあった。恥ずかしいという気持ちも。
「どうして?」
未沙は尋ねた。
輝は真面目な顔で静かに答えた。
「自分が産めない以上、せめて誕生の瞬間を見届けておきたいから。
あと・・」
「なに?」
「・・・・・いや、なんでもない」
いいかけて、輝は口を噤み、そのまま黙ってしまった。
気になった未沙ではあったが、彼がとても真摯な目をしていたので、こう、答えた。
「分かったわ。どうぞ。」

2人の不安と期待を乗せて、時間は静かに、ゆっくりと進んだ。

**

そしてその日の夜。
未沙が、ついに定期的な痛みを訴え始めた。
時計を見て時間を計りながら、彼女は言った。
「輝。・・・そろそろメディカルセンターへ行きましょう。」
「わ、わかった。」
いよいよだ。
輝は、自分の心臓の鼓動が早くなるのに気がついた。
未沙の方は、心の準備ができているのか落ち着いて見える。
時折、痛みに顔を歪めてはいるが、まだ普段の未沙と変わらないように見える。
輝は急いで出発の準備をした。

ほどなくして2人はメディカルセンターへ到着した。

ドッドッドッドッドッ・・・
モニターから胎児の心音が聞こえる。
とても早い鼓動。
生命の力強さを感じさせるその音が静かな病室に響く。
大きくなったり、小さくなったり、周期に合わせてうねる。
ベットの上の未沙が苦痛に顔を歪める間隔が、少しずつ、短くなっていく。
痛みに襲われるたび、彼女は大きく息を吐き、呼吸を整える。
「輝・・・」
彼女が手を差し出す。
輝は何も言わず、その手を包むように握り締める。
痛みに襲われると、未沙は彼の手を強く握り、その痛みに耐える。
輝には彼女の痛みはわからない。
こうするしかない自分が無性に歯痒かった。

そして、そのまま数時間が過ぎた。

彼女が寝ていたベットが看護士達によって分娩台へと変形された。
未沙の表情に、今までのような冷静さは既になくなってきていた。
波のように押し寄せる強い痛みに必死で耐える。
事前にいろいろと予備知識を蓄え、準備万端で臨んだつもりではあったが。
ここまでくると、もう自分の意思ではどうしようもなくなっていた。
痛みを逃そうとしても、逃れられない。
陣痛の合間にほっと息をついてもまたすぐに次の波が押し寄せる。
未沙は遠い意識のなかで、事前に読んだ本に書かれていたことを思い出した。
『出産の時の苦しみはお母さんだけのものではありません。
赤ちゃんも産まれてこようと必死で頑張っているんです。
そのことを忘れないで下さい。』
そうね・・あなたも頑張ってるのよね。
産道をくぐりぬけようとする我が子を必死でイメージしようとした。

輝は、彼女の頭の後ろから、その瞬間を見守る。
「・・・痛───いっっ・・・!!!!」
余りの痛みに、今まで必死で耐えていた未沙もついに声をあげた。
「がんばって」
彼女の両手を包み込むように握り、一緒に呼吸を合わせる。
自分が産むわけじゃないのに。
まるで自分も一緒に産んでるみたいだ。

──そして。
輝と未沙の長女が誕生した。
その瞬間、知らず、輝の目からは涙がこぼれた。
足が震えていた。
医師が取り上げた赤ん坊を未沙の腹の上に乗せる。
その両腕を未沙が支える。
「やっと、やっと会えたね・・・」
文字通り、真っ赤な顔をして産声を上げる赤ん坊に触れて、未沙の頬にも涙が伝った。

処置が終わった後で、輝も産まれたばかりの子供を抱かせてもらった。
自分の腕の、肘までに全身が乗ってしまう、小さな身体。
か細く頼りない手足。
けれど、とても暖かく、そして想像以上に重たい。
生きているんだ。
さっき聞いた、早くて力強い鼓動が耳に蘇る。
なんともいえない幸福感に、輝は酔った。

**

「未沙、おめでとう。・・うわ、さすがに産まれたばっかりは小さいわね。」
翌日、クローディアが入院中の未沙のところへやってきた。
「約束を果たしてもらいに来たわよ。覚えてるわよね?」
いたずらっぽくウィンクする。
未沙はにっこり笑った。
「ええ、もちろん。・・クローディアおばちゃん、よろしくお願いします~」
小さな赤ん坊は、クローディアの腕に抱かれた。
その感触にクローディアの頬が緩む。
「小さいけど、しっかり生きていますって感じがするわね。
・・名前は決めたの?」
「もう、だいぶ前に女の子って分ってたから・・。輝と相談して決めたわ。
みく、です。未来って書いて、みく。」
「いいわね。これからの時代を背負う子にぴったりの名前ね。
あなたの名前と同じ字も入っているし。・・一条くん、喜んだでしょう。」
「ええ。毎日抱っこしに来てるわ。でも・・ちょっと気になることがあって」
「なに?」
「なんだか、時々、ふっと寂しそうな顔をするの。」
「・・そう。どうしたのかしら?気のせいじゃないの?」
「そうだといいんだけど。」
ふぁ、ふぁ、ふぁーん・・・と、未来が泣き始めた。
「あらあら、どうしたのかしら・・」
「多分おっぱいだと思うわ。・・ちょっとごめんなさいね。」
未来に乳を含ませる未沙の姿を見て、クローディアは少し、切ない気持ちになった。
親友の幸せそうな姿をみると、自分も嬉しい。
こちらも幸福のおすそ分けをしてもらっているような気分になる。
けれど、心の奥底で、少し、ほんの少しだけ、複雑な思いがあるのも事実だった。
こんな気持ちを持ってしまう自分が嫌だった。
「未沙・・。本当によかったわね。また、くるから。」
「ありがとう、クローディア」
未沙にこんな気持ちを悟られないうちにと、彼女は手を振って病室を後にした。

数日後、未沙と未来は退院し、親子3人での新しい生活がスタートした。
輝は相変わらず忙しい勤務が続いていたが、グローバルとクローディアの配慮で、
決まった時間に出退勤できるシフトに変えてもらっていた。
未沙は慣れない育児に戸惑いながらも、新鮮な毎日を送っていた。
今まで家になかった未来のもの。
おむつや、肌着や、ベビーベット。
授乳の時間。
育児は想像以上に大変ではあったが、とても幸せだった。
輝も勤務が終わると、すぐに帰ってきて手伝ってくれる。
小さな未来を沐浴させるのは彼の仕事だ。
父親になった彼は少しだけ、頼もしく見えた。

それでも、やはり、未沙は気になって仕方がなかった。
時々見せる、輝の寂しそうな表情が。
出産前にはなかったことだったので、未沙には原因が分らなかった。

そんなある日のことだった。
「・・ちょっと変なこと聞いてもいい?」
ぽつりと輝が呟いた。
「なに?」
未来を抱いている未沙が輝のほうに顔を向ける。
「もし・・・。もしも、君が未来を産むときに、その・・死んでしまうようなことに
なってたとしたら、どんな風に思っただろう?その、こんなこと考えるのおかしいとは
思うんだけど・・。君がいなくなったら、俺はどう思うだろう、君自身はどう思うだろう、
未来のこと恨んだりとか・・、こんなこと口に出しちゃいけないんだろうけど・・・」
未沙は輝の様子がいつもと違うのに気がついた。
ひどく辛そうに、そして不安そうな表情で、吐き出したおかしな質問。
いつもの未沙であれば、あまりの唐突さと質問の内容に怒り出していたかもしれない。
けれど、その時、未沙は気づいた。
『ひょっとして・・これが原因なのかしら・・』
出産前、立ち合わせて欲しいと輝が言い出したときにも、様子がおかしかったことを
併せて思い出した。
『もしかして、お母様のことを考えているのかしら・・・?』
輝本人があまり両親の話をしたがらないので、未沙も詳しい事情は知らない。
未沙が知っているのは、輝から聞いた事実(あくまで事実のみ)と、クローディアやフォッカーから
聞いた話だけだ。
未沙は、あくまで自分のこととして、答えることにした。
今の私なら、答えられる。
それで彼が救われてくれればいいと、願いながら。
「あのね・・」
優しいまなざしを未来に向けながら口を開く。
「未来を産むときに死んでしまったとしても、だからといって未来を恨むようなことは絶対にないわ。
でも、心残りはあると思うの。・・・それは、」
腕の中の未来を優しく見つめる。赤ん坊特有の暖かさが、母親に幸福をもたらす。
「もっともっと、いっぱい抱っこしてあげたかった。もっともっと一緒にいたかった。
ほんの少しの間でもいい、少しでも長く、自分の腕で、産まれてきた未来を抱きしめてあげたいと思うんじゃないかしら。」
視線を輝に向ける。
「あなたがどういう気持ちになるかはわからないけど、あなたに対しては・・そうね、ずっと
一緒にいられなくなってごめんなさい、という気持ちと、私の分まで未来を愛してあげて、と
いう気持ちと両方になるかしら・・。あくまで想像だけれど。」

輝は目を見開いた。
目の前にいるのは、未沙と未来だ。
しかし、輝にはそれが、自分の母と自分の姿に重なって見えた。現実には、母が自分を抱っこしている姿など写真でさえ見たことはないのに。
そして、聞いたことがないはずの母の声が聞こえた。・・ような気がした。

『輝・・。もっともっと抱きしめてあげたかった・・。ごめんね・・。』

「──ちょっと、ごめん」
輝は溢れてきた涙を隠すように、部屋を出た。
「・・ううっ・・」
部屋の外で声を押し殺すように、彼は泣いた。
抑えようとしても、溢れ出て来る感情と涙を止めることができなかった。

これまで心の中で、無意識に彼を苦しめていたこと。
自分が母親を殺してしまったんじゃないか。
何も言いはしなかったが、父親も少なからず自分を恨んでいたのではないか。
自分さえいなければ、父も母も一緒にいられたのではないか。
自分は生きていていいのだろうか。
小さい頃から感じた母のいない寂しさ。
無条件で抱きしめてくれる、愛を。
求めてはいけないと、無意識に苦しんでいたのか。

何がきっかけになって、このことを思い出してしまったかはわからない。
今まで考えないように心の奥底に隠していた苦しみ。
父も母も死んでしまった今、誰にも答えをもらうことはできない。
一生抜けることのないと思っていた心の棘。

けれど、未沙の一言が、彼の心の棘を抜いてくれたらしかった。
涙と共ににその棘は流れていった。
輝は顔を上げ、シャツの袖で、涙でぐしゃぐしゃになった顔をぬぐった。
そのとき、輝にはもう一度、母の声が聞こえたような気がした。

『あなたが生まれてくれて、生きていてくれて、本当によかった・・・』

輝は部屋に戻ると、無言で2人を抱きしめた。
家族の体温は暖かかった。
ここにはいない家族のぬくもりも一緒に感じられるようなあたたかさ。
きっとこれが、家庭というものなんだな、と彼は思った。

「・・輝・・?」
「・・いや、ごめん。あと、ありがとう。」
「・・・」
小さな声で呟く。
「未沙と未来のおかげで、やっと母さんに会えたよ。」
「・・そう。・・よかったわね」
未沙は心からそう思った。優しく彼を見つめる。
「うん・・・。」
輝は小さく答えると、そのまま甘えるように、未沙の膝に顔を埋めた。

**

ちいさなしあわせ。
どこにでもある日常。家族と、自分と、仲間と。共に生きる社会の人々と。
愛してくれる人がいる幸せ。
愛せる人がいる幸せ。
愛するということができる幸せ。

当たり前と思える大事なことをなくしてしまう、なくされてしまう前に──。

2015年9月。初の宇宙移民艦、メガロード01は宇宙へと旅立った。
旅は長く、苦しいものになるかもしれない。植民可能な星を見つけ、移民の生活を軌道にのせることは容易いことではない。
それでも、きっといつかは。
宇宙のどこかで、メガロード01を中心に新しい社会が形作られ、人々が微笑んで暮らせる日がくるだろう。

その日のために。
大佐となった風格を漂わせ、艦長席に座る彼女の顔は凛として、一分の隙もない。
バルキリー隊を率いる彼は、たくさんの命を載せた艦を護る。その瞳には真っ直ぐで、冷静な光が宿っている。
小さな彼女だけは・・・彼らの、やさしいママとパパの顔しか知らない。

この家族もきっと、他のたくさんの家族と同じように、宇宙のどこかでちいさなしあわせを分かち合いながら暮らしていくことだろう。
これからもずっと。
そう、願ってやまない。


おわり
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コメント

拍手レス♪

ずっと更新していないにもかかわらず、過去の記事にもたくさん、たくさん、拍手をいただいて本当にありがとうございます。感謝感謝です。また妄想の神様が降りてこないかな・・


ぶいこさん

はじめまして。コメントありがとうございますi-178
確かに空白の2年間後の輝はひどい・・・ですよね。。
彼は女性の気持ちが分からない、鈍感、優柔不断とよく言われますが、一番身近な女性である母の記憶がないわけだからある意味仕方なかったのでは、と思います。

未沙の妊娠出産話を書きたい!と思ったときに輝の生い立ちを絡めて書こうと思ったのは、劇場版で未沙に父親が事故で亡くなった時の話をしたあとの輝のすごく寂しそうな表情が印象に残っていて、いつもはそんなことを思い出させない彼も実は心の奥底に寂しさを持ち続けているんじゃないかと思ったからなんです。そして未沙と未来と一緒なら、もうそんな悲しい顔をせずにすむんじゃないかと。

お話気に入っていただけてとても嬉しかったです。
どうもありがとうございました。
また遊びに来てくださいねi-228

シリウスさん、ありがとうございます(^^)
未来ちゃん誕生と絡めて輝の生い立ちにまつわるいろいろも描いてみたくて書いた作品ですが、実はこのお話が自分が一番書きたかった話でして。もうこれ書き上げちゃったらもう書くものないや。。みたいな・・(^^;)
気に入っていただけたならよかったですv-344

e-420e-415未来ちゃん誕生おめでとう~

妊娠をして・・・職務を続行するなんて、さすが鬼の早瀬中佐ですねe-287
ブラウンも登場で(実は私は好きなんですね・・・)
楽しくなってく艦内ですね。

回りの噂に負けんな輝~~~~~~~~~e-281
非公開コメント

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