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White Christmas

2008.09.02 10:53|Little Happiness
White Christmas


2012年12月24日。

1年前に激しい戦闘が行われたとは到底思えないほど、シティはきらびやかに彩られ、人々はその華やかな街並みを楽しんでいる。デパートの前には大きなクリスマスツリーが飾られており、子供たちはその大きなツリーを見上げ、笑顔でサンタクロースがやってくるのを信じている。

輝と未沙は、そんな街を珍しく二人で歩いていた。
未沙が妊娠し悪阻でずっと体調が悪く、通常勤務につくのもままならない時期が続き、ましてやプライベートでの外出などとてもできなかった。
しかし、ようやく安定期に入り、彼女の体調も落ち着いてきたことから、久しぶりに二人一緒の休暇が取れたこの日、街に出てきたのだった。
クリスマスイブに二人揃って休暇を取れるなど、普通ならありえないのだが、クローディアが気を利かせてくれた。
「結婚して最初のクリスマスでしょ?しかも2人っきりで過ごせるのは今年を逃すとしばらくないわよ。ね、未沙。私からのクリスマスプレゼント、受け取ってくれるわよね?」
そう言ってクローディアは遠慮する未沙に半ば強引に輝と一緒の休暇を取らせてくれたのだった。

「うわぁ、かわいい♪」
デパートに入った二人はいろいろな売り場をウィンドーショッピングしていた。
正直、買い物にあまり興味のない輝は少しつまらなかったが、楽しそうにあちこちの売り場を覗いている未沙を見るのは嬉しかった。
いま、彼女はベビー服のコーナーでひっかかっていた。
小さな洋服を手に、嬉々としている。
「ね、輝、こんなのもあるわよ♪うわぁこの靴ちっちゃい!」
「・・・そんなの着るのはまだまだ先だろ?大体まだ男の子か女の子かも分かってないってのに。
気が早いなぁ。」
「・・・そりゃあ、まだ先だけど・・・。でもいつか着るんだから、今後のために調査をしておかないとね。」
「はいはい、お気の済むまでどうぞ。」
そっけなく返事をしながらも、彼は優しい目で彼女を見ていた。
まだ見た目にはあんまり変わらないし、自分は相変わらず実感が沸かないが。
彼女はもうすでに「母親」なんだな、と改めて思った。

次に未沙はCDショップに行きたいと言い出した。
「めずらしいな、未沙がCD欲しいなんて。」
「やぁね、私もよく音楽聴いてるわよ。CDだってたくさん持ってたんだから。・・・だいぶなくなっちゃったんだけどね。」
「ふーん、そうだったんだ。──で、お目当てはなに?決めてるの?」
「ええ。ミンメイさんのクリスマスアルバムが出たって、この間偶然聞いたラジオで曲がかかっててね。とっても素敵だったの。だから、欲しくなって。」
「へぇ・・。ミンメイのクリスマスアルバムか・・。俺も聴いてみたいな。」
ショップの入り口にはミンメイの大きなポスターが貼ってあった。
これまでのアイドル時代とは違って落ち着いた色調のポスターで、そこには大人っぽい雰囲気の彼女がいた。穏やかな微笑みを浮かべ、グランドピアノに寄り添っている。
そして、店内には、ミンメイのアルバムから「White Christmas」が流れていた。

♪ I dreaming of a white Christmas
Just like the ones I used to know ~ ♪

「ミンメイさん、前から上手だったけど、再デビューしてからまた一層上手になったわね。
今回のアルバムはスタンダードばかりなんだけど、とっても素敵に歌いこなしてる、アイドルは卒業、実力派の仲間入り、ってラジオでは紹介されてたわよ。」
「・・・そうなんだ。本当に、いい声だな。」
「でしょう?あとでうちでゆっくり楽しませてもらいましょう」
嬉しそうに未沙がCDをレジに持っていくのを、輝は複雑な表情で見送った。
『──未沙、もう忘れてくれてるのかな・・・』
いや、そんなはずはない。自分だって、思い出してしまったのに。
「・・・どうしたの?」
レジから戻ってきた未沙が輝の顔を覗きこむ。
輝はあわてて返事をした。
「い、いや、なんでもない。・・・さて、大体見たな。他に行きたいところある?」
「食品売り場に行きたいわ。紅茶を買いたいの。それから、今日のディナーの材料も」
「そう、それじゃ行こう。」

食品売り場へ行くと未沙は紅茶が並べてあるコーナーへと向かった。
そこには紅茶のほかに、ハーブティーなども並んでいる。
『・・・紅茶より、ハーブティーにしたほうがいいかしら・・・。妊娠してる時ってカフェインあんまりとっちゃいけないって聞いたことがあるわ。』
ハーブティーを一度手に取ってみる。ジャーマンカモミールティだ。ノンカフェインで気持ちを落ち着かせてくれ、妊婦には最適と聞いたこともある。
『でも・・・』
未沙はもう一度紅茶の方へ目をやる。
このご時世だからか缶入りの、ティーバッグでない紅茶はどこも品薄で、シティ一の規模を誇るこのデパートでも、未沙の好きなダージリンは1つしか残っていなかった。
『今買っておかないと、もう手にはいらないかも・・』
ハーブティーを置いて、もう一度紅茶の缶に手を伸ばしたとき、同じ缶に別の女性の手が伸びた。
未沙はどちらを買おうか逡巡していて、周りの状況まで見えていなかったのだ。
「あ・・・」
「・・・すみません」
2人は同時に謝った。
「ごめんなさい、あなたが先だったのね、どうぞ。」
「いえ、いいんです。実はカモミールティとどちらを買おうか迷っていて・・でも、これであきらめがつきました。私妊娠してるので、ほんとはノンカフェインの方が体のためにはいいんですよ。」
未沙はそう微笑むと相手に紅茶の缶を渡した。
「そういうことなら、遠慮無くいただきます。どうもありがとうございます。赤ちゃんがおなかにいるんですか。いいですね。とてもハッピーなクリスマスね」
相手の女性も柔らかく微笑んだ。
年は未沙より同じくらいか少し上、といったところだろうか。僅かな会話だけでも、その優しそうな人柄が伝わってくる。
「マリー、マリー!」
その時、彼女を呼ぶ声がした。あわてて振りかえる。
「はーい、ちょっと待って。」
マリーと呼ばれた彼女の連れが彼女を探してやってきたようだ。
その男性を見て未沙は驚いた。
「・・・・ブラウン少佐!!」
「一条中佐じゃないですか!どうしたんです、こんなところで」
「ただのお買い物よ。ブラウン少佐も今日お休みだったんですか?」
「ラサール中佐やレイアード中尉のおかげで午後からお休みにしていただいたんです。ここの所連続勤務だったのを気遣って下さって。」
「そうだったんですね。私がご迷惑かけているばっかりに、すみません。」
「いえ、それも私の仕事なんですから、気になさらないでください。」
すまなさそうに頭を下げる未沙に、ブラウンは笑顔で答えた。
「ところで少佐、こちらの方・・」
「ああ、彼女は私の・・その・・友人で・・マリーといいます。それにしてもなぜマリーと中佐が?」
「好きな紅茶が一緒だったのよね?」
未沙はマリーに微笑んだ。マリーも微笑みを返す。
「エディ、この方のお知り合いだったの?」
「知り合いもなにも、私の上司だ。今度就航する移民艦メガロード艦長の一条中佐だよ。・・中佐、お一人なんですか?」
「いいえ、彼も一緒よ。そのへんうろうろしてるって言ってたから、そのうち戻ってくるんじゃないかしら。」
そんな話をしているところに輝がやってきた。
「あ、いたいた。紅茶あったの?・・・・あ」
ブラウンに気づき、少し困惑した表情を浮かべたものの、すぐに笑顔で挨拶した。
「どうも」
「どうも」
男2人の挨拶はそっけない。
輝はブラウンの傍らにいる女性の存在が気になり、ちらちらと目線を送っていたが、さすがにブラウンに聞くことはできなかった。
そして急に、自分と未沙が二人でこうやって買い物をしているところを、知っている人間に見られているのが妙に恥ずかしくなってきた。
「・・・未沙、そろそろ行こう。あんまり歩き回ってるとよくないんだろ?また体調崩したら大変なんじゃないの?」
なぜか怒ったような口調で輝は未沙に言った。
その言い方に未沙は戸惑った。しかし一応自分の体調を気遣ってくれているらしいので、素直に彼に従う事にした。
「え、ええ。・・それじゃ、ブラウン少佐、マリーさん、よいクリスマスを。」
「ええ。よいクリスマスを。」
ブラウンとマリーは笑顔で2人を見送った。
「まだ少し、子供っぽいところがあるんだよな、彼は・・」
ブラウンは、ふふっと微笑した。
「エディ?」
マリーがその仕草に気づいて尋ねる。
「いや、なんでもない。行こうか。」
ブラウンとマリーもまた、歩き出した。

紅茶売り場を離れて、輝と未沙は今度は今夜のディナーの材料を探し始めた。
「何が食べたい?」
「んーー、そうだなぁ・・・やっぱりさ、クリスマスというと、チキン?」
輝の口調にはさっきのようなキツさは無くなっている。
『なんだったのかしら・・・?』
きっと、自分の事を探し回ってやっと見つけたと思ったら、楽しそうにブラウン少佐達と立ち話をしていたので少しむっと来たのだろうか。心配していたからなのだろう、と未沙は自分を納得させた。
「そうね。じゃあ、チキンをメインにして、あとは適当に買って、帰りましょうか。」
「ああ。そうしよう。・・・ね、未沙」
「なに?」
「さっきの女性・・・」
「ああ、やっぱり気になってたのね。同じ紅茶を手に取ろうとして・・。ブラウン少佐は友人、て紹介してくれたけど。・・・あなたどう思う?」
未沙が輝の顔を覗きこむ。
「・・・彼女、なのかな?」
「多分ね。・・・ね、内緒にしといてあげましょうね。」
「はいはい。俺は最初から誰かに話すつもりなんてないけどね。・・・シャミーじゃあるまいし」
「・・・彼女と一緒にしないで。」
くすっと未沙が笑った。
楽しい買い物を終えた二人は、家路についた。



クリスマスのディナーを終え、二人はソファで寛いでいた。
ディナーといっても、いつもの夕食とそんなに変わらない、ささやかなものではあったが。
それでも2人で囲む食卓はとても暖かかった。
そして、未沙は買ってきたハーブティーを、輝は未沙のとっておきのワインを飲みながら、結婚してから幾度と無く味わった、心地よい沈黙を楽しんでいる。

しばらくして未沙が言った。
「ね、せっかく買ったから、CD聴かない?クリスマスアルバムなんだし。」
「いいね。」
輝も賛同した。
スピーカーからミンメイの歌うWhite Christmasが流れてきた。
再デビューした彼女の歌声は表現力が増し、華やかさだけでなく、どことなく哀愁も帯びていた。

1年という期間は、短いようで、長い。
しかし、長いようで、短くもある。

しばらく静かに聴いていたが、ぽつりと、輝がつぶやいた。
「・・・未沙。その──やっぱりごめん。」
「え?」
「去年の・・・」
なんとなく輝の言わんとすることを理解した未沙は、輝の言葉を遮った。
「その話なら、もういいじゃない。」
彼女は穏やかな微笑みを浮かべて、困惑した表情の輝を見つめた。
「今、あなたは私の傍にいてくれてる。これからもずっと、・・でしょ?」
いたずらっぽく微笑む。
「そりゃもちろんそうだけど・・・。」
「だから、もういいのよ。私は今、あなたと一緒にいるんだから。それで十分よ。」
そう言うと、傍らの輝の肩に頭を乗せた。
彼女は体を彼に預けて瞳を閉じ、ミンメイの歌声にしばし、聴き入った。

未沙だって、去年の辛い思い出は──忘れるはずもない。
きっと、ミンメイの歌声を聴いて、彼は思い出してしまったのだろう。去年の出来事を。
そして、そのことで未沙を深く傷つけてしまったことも。
彼なりに申し訳無い、という気持ちを拭い去れないのだろう。
でも今更思い出す必要もないことだ。
この1年の間に、ミンメイは自分達の前から去り、未沙は輝の妻となった。
去ったミンメイも、しっかりと再スタートをきった。
自分達もメガロード計画に向けて着々と準備を進めている。
未来に向けて、それぞれの道を歩み始めている。
それで、いいのだ。

輝がそっと未沙の肩に腕を回した。優しく彼女を抱きしめる。
間近にある彼女の亜麻色の髪からいい香りが漂う。
一時期に比べて、食べられるようになったからか、頬のあたりが少しふっくらとして、いくぶん柔らかい印象になった彼女の顔。気持ちよさそうに自分の肩に頭を預け、うっとりと音楽に耳を傾けている。
彼は、そんな彼女をとても、いとおしく感じた。

ソファで2人寄り添って、ただ音楽を聴く。
気の利いた会話をするわけでもなく。ただ、静かに。
豪華なクリスマスプレゼントのやり取りは何もないけれど、彼らにとっては2人でゆったりと過ごしたこの時間が、なにより贅沢なクリスマスプレゼントだったに違いない。

来年もまた、素敵なクリスマスを迎えられますように・・・



おわり
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