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Birthday(2013) side H

2008.09.02 10:48|Little Happiness
※MISS MACROSS様では「Birthday(2013)」のタイトルで掲載しています。
Birthday(2013) side H







マクロスシティのショッピングセンターは今日も買い物客で賑わっている。
平日の昼間ということもあって、客層は子供連れの主婦が大半だ。
彼女もまた、カートに娘を乗せ、買い物をしていた。
亜麻色の髪をゆるく編んで肩に流している。
カートの中の子供はまだ生後半年くらいだろうか。
彼女はごく自然に親子連れの中に溶け込み少しの違和感もない。
彼女がメガロード艦長、「鬼の」一条中佐だとは、誰も気がつかなかった。
半年以上も職務を離れているので、当たり前といえば、当たり前なのだが。

「あ、んま・・・」
「だめよ、未来ちゃん。それはさわっちゃ、だめ」
カートから手を伸ばして、陳列されている商品を未来が触ろうとしている。
笑顔でなだめながら、話しかける。
「ねぇ、みくちゃん。明日はね、パパのお誕生日なのよ♪」
話しかけられて、ちらっと未沙の顔を見たものの、当然未来は返事をするわけもなく、
きょろきょろといろんなものを眺めている。
しかし、未沙は気にせず、ひとり言?を続けた。
「ケーキ焼いて、ごちそう作って、お祝いしましょうね♪何を作ったら喜んでくれるかな?
ねぇ、みくちゃん。」
ふんふん♪と鼻歌混じりでカートを押しながら、買い物をする彼女はとても楽しそうだった。

翌日。
いつもなら、起きてくる時間に輝が起きてこない。
朝食の準備をしながら、未沙は声をかけた。
「輝、そろそろ起きて」
しかし、返事がない。
不信に思って寝室を覗いてみると、まだ輝は眠っていた。
「どうしたの?そろそろ起きないと、間に合わないわよ。」
「・・未沙・・」
「なに?」
「なんか、ぞくぞくする・・。寒いんだ・・・。」
よく見ると顔色が悪い。慌てて自分の手を輝の額に当てた。
熱い。
「熱があるわ。ちょっと待ってて。」
すぐに体温計を持ってきて熱を測る。8度2分。ぞくぞくするということは
まだあがるかもしれない。
そういえば、ゆうべ帰宅したときも、熱はなかったものの、彼がひどく疲れた顔を
していたことを思い出す。
「咳や鼻水はないみたいね・・熱だけかしら?メディカルセンターに行く?」
「いや、そこまでは・・・とりあえず今日は休んで、薬飲んで寝とくよ・・・。
まいったな。今日も訓練のスケジュール詰まってたのに・・・。」
「急に寒くなったしね。きっと疲れがたまってたのよ。任務のことは忘れて、
ゆっくり休んだらいいわ。」
そっと彼の額を撫でる。
「そうだわ。輝。お誕生日おめでとう。」
「・・ごめん。いろいろ準備してくれてたんだろ?」
「何言ってるのよ。またすればいいわ。それに」
にっこりと彼の顔を見て微笑む。
「お誕生日は今日だけじゃないでしょ?来年のお誕生日もまだ地球で迎えられるわけだし。
今年は神様が休暇をプレゼントしてくれたんだ、って考えたら?」
「・・うん。」
元気のない輝の顔を心配そうに覗きこむ。
「未来の野菜スープだったら飲めそう?少しおなかに入れておいたほうがいいわよ。」
「ありがとう・・」
のそのそと起きあがると未沙がすぐにパジャマの上にカーディガンをかけてくれた。
食卓について暖かいスープをすする。じんわりと胃に染み渡る。
ベビーベットから未来の泣き声が聞こえてきた。
「あら、未来ちゃんもお目覚めのようね。パパと一緒にスープ飲むかしら?」
オムツを換えて、未来を抱っこしてテーブルにつれてくる。
未来は起きたばかりだが、目覚めはいいようだ。
輝が飲んでいるスープを見て口をもぐもぐさせている。
「未来、おはよう・・。これ、パパのだよ。未来のも、ママが持ってきてくれるよ・・」
『俺も今は乳児並・・・・』
ははは、と力無く笑う。笑う余裕があるだけ、まだましか。
悪寒がして、調子は最悪だったが、それでも、ほんわかと心は温かかった。
スプーンでスープを飲ませてもらう未来を眺めつつ、自分のスープを飲み干すと、
少しからだも温まったような気がした。
彼は薬を飲んで、司令センターに今日休むことを連絡すると、またベッドにもぐりこんだ。

──どのくらい眠っていたのだろうか。
「汗、かいてるみたいね」
未沙の声に、ぼんやりと目をあける。
先ほどまでの寒気がなくなり、今度は体が熱い。熱が上がりきったのだろうか。
タオルで額の汗を未沙が拭いてくれている。
「パジャマ、着替えましょうね。」
彼女が手早く彼のパジャマを脱がせ、体の汗を拭く。そして新しい着替えを着せてくれた。
起き抜けで、また熱のせいもあり、ぼんやりとした輝は、未沙のなされるがままになっている。
「・・・未来は?」
「さっき眠ったわ。・・輝は眠れた?」
「ああ・・まあね。」
「熱、上がりきってるみたいね。冷やしたほうが気持ちいいかしら」
アイス枕を輝の頭の下に置き、額に冷えぴたを貼る。
ほてった首と額がひんやりとして、気持ちいい。
「うちにこんなの、あったんだ・・」
「一応、子供がいるので、いざというときのために買っておきました。ついでに、大人用もね。
アイス枕は、未来よりあなたが先に使っちゃったわね」
「・・俺、子供みたい?」
輝が弱々しく笑う。
「ええ。大きな子供ね。小さな子供に、大きな子供。大変ね、わたしも」
くすっと未沙が笑った。優しく彼の髪を撫でる。
「それじゃ、おやすみなさい。きっともう少ししたら熱も下がってくるんじゃないかしら。」
「ありがとう・・」
寝室を出る未沙を見送ってまた輝は眠り始めた。

うとうとしながら、彼はぼんやりと考えた。
今日は自分の21回目の誕生日。
自分の誕生日は、すなわち母が亡くなった日でもある。
今までは、素直に自分の誕生日を喜べなかった。
もちろん、子供の時は嬉しかった。
スタントの合間をぬって、父は誕生日を祝ってくれた。
しかし、母の亡くなった事情が理解できるようになってからは、少し、違った。
祝ってもらっても、父が笑っていても、素直にありがとう、と言えなかった。
思春期特有の照れもあったのかもしれないが。
父が亡くなってからは、なおさらだった。
仲間内で祝ってくれることはあっても、それほど嬉しいと感じることはなかった。

去年の誕生日は・・やはり自分では意識していなくて忘れていたのだが。
その日もらったプレゼントは、彼にとってかけがえのないものだった。
未来が未沙のおなかにいる、ということだった。
そして約半年前の未来の誕生を経て、今年の誕生日は、不思議と素直に嬉しい、と思えた。
21年前に自分を生んでくれた母に、ありがとう、と。

そんな日に熱を出してしまったことは残念だったが、少し嬉しくもあった。
自分が寝込んだときに、すぐそばにいてくれる人がいる。

もちろん、子供の頃熱を出したときは、父親が忙しいスタントの合間をぬって、
ちゃんと看病してくれた。
しかし、スタント中は、仕方ないが、一人で寝ていることがほとんどだった。
寂しくても、心細くても、側に誰もいなかった。
でも、父親が精一杯、自分の世話をしてくれているのが幼いなりに分っていたから、
それ以上のことは望めないと無意識にあきらめていた。
そして1人で暮らすようになった15歳以降は、一人でいることが当たり前だったので、
誰も側にいないことに慣れてしまっていた。
入隊してからは、任務中に怪我をして入院することはあっても、熱を出して寝込むなんてこと
自体、久しぶりだった。
でも、未沙に看病してもらって、子供の頃を少し思い出した。
あの頃感じた、一人で眠ることの心細さを。
誰かがいることで感じる安心感を。

もちろん、未沙が軍務に復帰したらこんなことはもうないだろう。
彼女が看病したいと思ってくれるとしても、おいそれと休暇など取れるわけがない。
未来が熱を出したといっても休めないかもしれないのだ。
『これはこれで、いい経験させてもらったってことかな・・』
ふとんに顔をうずめて、彼はまた、うとうとと眠り始めた。

輝と未来が眠っている間、未沙はリビングで書類に目を通していた。
未来がまもなく生後半年を過ぎ、軍の保育所で預かってもらえるようになる。
故に彼女も年明けから徐々に職務に復帰する予定だ。
最初からフルタイムというわけではないし、まだ融通を利かせることはできるだろう。
産めよ、殖やせよという時世であることもあり、決して周囲に理解がないわけではない。
それでも、今までのようにつきっきりというわけにはいかないだろう。
本当は、もう少し未来のそばにいたい気持ちもあるのだが、立場上、
そういうわけにもいかなかった。
ブラウンがマメに連絡をくれ、また重要事項については、直接ブラウンが自宅に来て
打ち合わせをしたりしていたため、それほど職務についてのブランクは感じていない。
自分が子育てをして、宇宙移民の意義を改めて感じた彼女が職務復帰の準備をするのは
それほど嫌なことではなかった。
『復帰したら、また忙しくなるわね・・。』
ふぅとため息をついたそのとき、玄関のチャイムが鳴った。

玄関に立っていたのは、輝の部隊にいる若いパイロットだった。
同じ部隊で、しかも自分と同じ飛行機マニアな彼を、輝は特に可愛がっていて、
何回か自宅に招んだこともある。未沙も(彼女にとっても部下となるわけだが)、
そんな彼に親近感を持っていた。
「あら、ギャリーくんじゃない。こんな時間に、どうしたの?」
「あの、隊長、どうですか?体調崩されたって・・。今日、俺、早くあがれたんで
ちょっとお見舞いに。あとこれ、ジーナス少佐から、今日が隊長のお誕生日だって、
ちらっと聞いたんで、貢物です」
無造作に袋に入れられていたのは、マニアックな飛行機関係の雑誌だった。
「あら、ありがとう。気を使わせちゃってごめんなさいね。彼、今眠ってるのよ。
伝えておくわ。きっと喜ぶわ~。この本、欲しいけどなかなかないんだって探してたから。」
にっこりと微笑む。
「今日、みんな隊長のこと、心配してましたよ。体調崩して休まれるなんて
めったにないから。俺、言われちゃいましたよ、お前がヘマやって迷惑かけてたから
隊長疲れが出たんじゃないか、なんて」
「あら、そうなの?それは困ったわね。しっかりしてちょうだいよ。」
未沙がギャリーにいたずらっぽい視線を投げかける。
「そんなぁ、中佐まで勘弁してくださいよ・・・。それじゃ、俺これで。
失礼します。隊長によろしくお伝え下さい。お大事に。」
照れくさそうに笑うと、敬礼をして彼は帰っていった。

部屋に戻ると、輝が起きてソファに座っていた。
ぐずぐず言っている未来を抱っこしている。
「あら、2人とも起きたの?あなた、大丈夫?」
「いや、ちょっと目が覚めてうとうとしてたら、未来の泣き声が聞こえたんで。
・・はい、ママを待ってたんだよな」
未来を未沙に渡す。未来は未沙に抱かれると、ぴたっと泣き止んだ。
「少しは楽になってきた?」
「ああ。まだ少しふらふらするけど。」
未沙が輝の額に手を当てる。
「そうね、熱は下がってきたみたいね。・・あ、そうそう、今ギャリーくんが
来てくれてたのよ、あなたに貢物ですって。お大事に、とバースディプレゼント。」
そう言って本を渡す。
受け取った輝の瞳が急に元気になった。
「うわ、これ、欲しかったんだ!やった!!ギャリーよく見つけたなぁ。
あいつ、こういうところはさすがだよな。」
「いい部下をお持ちでようございましたね。」
未沙がからかうように言う。
「どんなお薬よりも効いたかしら。パパって面白いわね、みくちゃん。
・・輝、気分がよくなったんだったら、お夕食は食べられそうかしら?」
「ああ。」
「そう。よかった。じゃあ、もう少しゆっくりしてて。ベッドで寝てる?」
「・・いや。」
照れくさそうに輝は言葉を継いだ。
「・・一人で寝てると、寂しいからさ。ここでゴロゴロしてるよ。」
ソファに横になり、未沙がかけてくれた毛布にくるまり、ギャリーが持ってきてくれた本を
ぱらぱらとめくる。
足元では、寝返りをうちゴロゴロするようになった未来が、おもちゃを口にくわえて遊んでいる。
『神様がくれたプレゼント、か・・』
未沙が言っていた言葉をふと思い出す。
『・・確かにそうかもな。』
今日の休暇ってだけじゃなくて。
いま、このなんともいえない、暖かい気持ちを持てている自分がいること。
家族に、仲間に囲まれて生きている自分がいること。

そんなことを考えて、無意識に優しい顔になっていたのだろうか。
未来が、がらがらをくわえながら輝の顔をじぃっと見ていた。
輝が顔を向けると、未来は、にこっと笑った。
「だー、だー、」
ごろんと仰向けに転がって、輝へ小さな両手を伸ばす。
そんな娘がたまらなくかわいくて、彼は未来を抱き上げると、ぎゅっと抱きしめた。
「ママにはかなわないかもしれないけど、パパだって未来のこと、大好きなんだぞぉ」
未来の頬に自分の頬をすりよせる。
体の調子が悪いのも忘れそうなくらい、幸せな感触だった。
そして、自分にもそうしてくれた、父親の笑顔を思い出した。

誕生日の晩餐は、病気のせいもあってささやかなものになったが、
未沙は輝の好きなものを消化がいいように作ってくれた。
バースディケーキは準備できなかったが、代わりにバースディプリンを作ってくれていた。
「プリンなら、おなかに優しいしね。それに、なんだか楽しいでしょ、お誕生日って感じで」
大きなプリンに驚いた顔をした輝に、未沙が笑顔で言った。
「それじゃ、あらためて、輝、21歳のお誕生日おめでとう!」
「ありがとう」
カチン、とお茶で乾杯する。
「どうせ、私も授乳中で飲めないから、ちょうどよかったわ♪」
未沙は楽しそうだ。

きっと、来年の誕生日には、熱を出しプリンでお祝いした今日のことと、
つわりの未沙と夜中に笑いあった去年の誕生日のことを思い出すことだろう。
再来年も、その次も。
他のいろんな思い出と一緒に。
年をとるということは、それだけ、いろいろな経験が増えていくということで、
いい経験もあれば、嫌な経験もある。
中には思い出したくないこと、二度と経験したくないようなこともあるだろう。
そういった経験はこれまでの彼の人生の中でも、幾度と無くあった。
それでも。
できるだけ、楽しい思い出がたくさん積み重ねていければいいな・・・。
そうすることが、きっと、自分を生んでくれた母や、精一杯愛情を注いで育ててくれた
父に対するお礼にもなるんじゃないか、と輝はふと思った。
そして、未来に対しても、同じように思っている自分がいる。

そんなことを考えながら輝がプリンを食べていると、視線を感じて我に返った。
未来がじーっとその口元を見つめて、自分の口をもぐもぐさせている。
「ねぇ、未沙。未来ってプリンもう食べさせていいのかな?」
「少しならいいんじゃない?今日はパパのお誕生日だから特別ね。未来も参加したいのよね。」
未沙が未来を見て、にっこり笑いながら言った。
輝が自分のプリンをひとさじスプーンですくって未来の口にいれてやる。
「んまー」
未来はにっこりして、口をもぐもぐさせた。とても幸せそうな顔をしている。
「ママのプリン、おいしい?よかったな。」
輝も思わず、にっこりと笑いかえす。
「未来がそんなに嬉しそうな顔してると、パパも嬉しいよ。」
そして、自分の口にもひとさじ、プリンを入れた。

『誕生日って、嬉しいものなんだな・・・。』
未沙の作ってくれたプリンの甘さと一緒に、優しい気持ちがじんわりと、彼の心に広がった。



おわり
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